TCHはあくまでクセですので、ご自身で「あ、今歯が当たってる」と気づいて、ふっと力を抜く。これを繰り返していくことで、少しずつ改善します。
当院では、パソコン作業中、車の運転中、細かい作業をしているときなど、TCHが出やすい場面を問診で一緒に確認します。
そのうえで、目に入る場所にメモを貼るといった、シンプルですが効果のある方法をご案内しています。必要に応じて、就寝中に使うマウスピース(ナイトガード)も作製し、筋肉や関節への負担を減らします。
こうしたお悩みは、顎関節症と呼ばれる症状かもしれません。顎関節症は、顎の関節やその周りの筋肉に起こる、長く続きやすい不調をまとめた呼び名です。
院長は日本口腔外科学会の専門医として、これまで数多くの顎関節症の患者様を診てきました。
お一人おひとり症状の出方も原因も違いますので、まずは何が起きているのかを見極めたうえで、治療の進め方をご提案しています。
顎関節症は、日本顎関節学会の分類によって主に4つのタイプに分けられます。
症状が似ていても、原因となっている場所は人によって違います。
タイプを見誤ったまま治療を進めると、なかなか症状が改善しない原因になりますので、最初の診断が肝心です。
顎関節症は、原因がひとつだけということはほとんどありません。筋肉のこわばり、噛み合わせ、普段のクセ、精神的な緊張など、いくつかの要因が重なって起こることがほとんどです。
当院ではお話を伺う問診、お顔や顎を触れて確認する触診、口がどれくらい開くかの測定を行います。必要に応じてレントゲンやCT撮影も行い、症状の原因を確認したうえで、患者様に合った治療を組み立てます。
口腔外科と口腔内科、両方の視点から診ることができる体制が、複雑なお悩みの診断にも役立っています。
TCHというのは「Tooth Contacting Habit(トゥース・コンタクティング・ハビット)」の略で、日本語では「歯牙接触癖(しがせっしょくへき)」と呼ばれます。食事や会話のとき以外でも、上下の歯を軽く触れさせたままにしてしまうクセのことです。
健康な状態では、1日のうち上下の歯が触れている時間は合計で20分ほどしかありません。
食事のときに噛んで飲み込む、その一瞬だけです。それ以外の時間は、上下の歯は1〜3mmほど離れているのが正常な状態です。
TCHのある方は、日中の長い時間、無意識に歯を軽く触れさせています。そのあいだ噛むための筋肉はずっと小さな力を出し続けることになり、じわじわと疲れがたまります。
歯と歯を触れさせている状態では、頬の奥にある「咬筋」という、噛むときに主に使う筋肉が常に働き続けます。軽く触れているだけでも、それが何時間も続けば筋肉は疲れ切ってしまい、痛みや張りとなって現れます。
さらに、筋肉のこわばりは顎の関節にも負担をかけ、関節の中のクッション(関節円板)がずれたり、炎症が起きたりする原因にもなります。
夜の歯ぎしりや強い食いしばりが話題になりがちですが、日中のTCHは本人が気づかないまま長時間続いているため、顎関節症がなかなか治らない大きな原因として、近年特に注目されています。
TCHはあくまでクセですので、ご自身で「あ、今歯が当たってる」と気づいて、ふっと力を抜く。これを繰り返していくことで、少しずつ改善します。
当院では、パソコン作業中、車の運転中、細かい作業をしているときなど、TCHが出やすい場面を問診で一緒に確認します。
そのうえで、目に入る場所にメモを貼るといった、シンプルですが効果のある方法をご案内しています。必要に応じて、就寝中に使うマウスピース(ナイトガード)も作製し、筋肉や関節への負担を減らします。
ボトックスというのは、ボツリヌス菌が出すタンパク質を医療用に精製したお薬のことです。
筋肉に「働きすぎないように」と伝える作用があり、緊張しすぎている筋肉の活動を一時的にやわらげることができます。
顎関節症の治療では、咬筋(噛むときに使う頬の筋肉)に注射することで、強い食いしばりや歯ぎしりをやわらげる目的で使われます。
食いしばりが強い方の場合、マウスピースやTCH改善のトレーニングだけでは、筋肉のこわばりを十分にゆるめきれないことがあります。
ボトックスは咬筋そのものの働きを直接おだやかにする治療なので、夜間の歯ぎしりが軽くなり、日中の無意識の食いしばりによる筋肉の疲れも減ります。その結果、顎の関節にかかる負担も減って、症状の改善につながります。
診察のうえでボトックスが合うと判断した方に、左右の咬筋に細い針で数カ所、注射を行います。注射そのものは5〜10分ほどで終わります。
効果は注射の2〜3日後から少しずつ現れて、2週間ほどで安定し、その後3〜6か月ほど持続するのが一般的です。
効果がうすれてきた頃にもう一度注射を行うことで、長期的に筋肉のこわばりを和らげることができます。
咬筋の働きがおだやかになると、筋肉のボリュームが少しずつ減って、エラの張りが目立たなくなる方もいらっしゃいます。お顔の輪郭がすっきり見えるという変化です。
また、歯ぎしりが原因で起こりやすい歯のすり減り、被せ物や詰め物が外れてしまうトラブル、インプラントへの過剰な負担を防ぐ効果も期待できます。
顎関節症の治療を主な目的にしつつ、こうした変化についても事前にご説明します。
ボトックス治療は自費診療となり、健康保険は使えません。妊娠中・授乳中の方、神経や筋肉の疾患をお持ちの方は、治療を受けていただけません。
お薬の効果は一時的なものですので、食いしばりのクセそのものがなくなるわけではありません。TCH改善のトレーニングやマウスピース治療と組み合わせていただくことで、より安定した効果が長く続きます。
顎の痛みには、いろいろな原因があります。顎関節症以外にも、歯や歯ぐきの炎症、親知らずの影響、副鼻腔炎が原因で顎のあたりが痛くなることもあります。
当院では口腔外科と口腔内科の視点から原因を見分けたうえで、治療をご提案します。
注射針はとても細いものを使いますので、ほとんど痛みを感じません。実際、当院で痛かったという方はいらっしゃいません。
痛みが心配な方には、表面麻酔をご用意することもできます。治療後の運動制限などもほとんどなく、すぐに普段通りの生活に戻っていただけます。
ボトックスは症状を一時的にやわらげる治療ですので、一度で完全に治るというものではありません。3〜6か月ごとに継続される方もいれば、TCHのトレーニングやマウスピース治療がうまく進むにつれて、注射の間隔を延ばしていける方もいらっしゃいます。治療の計画は、初回の診察時にご相談しながら決めます。
多くの場合は、まずマウスピースとTCHのトレーニングからスタートし、それでも症状が十分に良くならない場合や、症状が強い場合にボトックスを検討する流れになります。
ただし、食いしばりがとても強い方やお仕事の状況によっては、最初からボトックスを組み合わせたほうが良いケースもあります。診察のうえでご提案します。
軽い症状の場合は、生活習慣を少し見直すだけで楽になることもあります。
ただし、症状が何度も繰り返し出る場合や、口が開きにくい、音が鳴るといった状態が続く場合は、悪化する前に診てもらうことをおすすめします。早めの対応が回復への近道です。